科学論文の25本に1本に不正があるとしたら?
何を信じればいいのかわからなくなってきますよね。
今日はある衝撃的な本の内容をシェアしたいと思います。
タイトルは「Sience Fictions あなたの知らない科学の真実」。
あなたの「科学」に対する印象ってどんなものでしょうか。

「絶対」、「信頼できる」、「透明性」とか、かな?



「科学的に・・・」という枕詞がつくと、なんか「安心」できる
科学に良い印象を持っている人が多いのではないでしょうか。
スリーエムジャパン(株)が実施した調査でも、
9割弱の人々が「科学」や「科学者」を信頼していると回答したということです(参考:科学に対する意識調査)
ところがです。今回紹介する「SIENCE FICTION」を読むと、
このような科学への絶対的な信頼が揺らぐかもしれません。
- 何かとヴェールに包まれていてわかりにくい科学業界の実態を知りたい方
- 科学者を志している方
- これからの科学のあるべき姿について論じたい方
\ それでは、いってみましょう


科学が世に出るために踏まなければならないステップ
そもそも科学が世界的に信頼されている理由はどこにあるのでしょう。
それは、科学の発展が人々の生活を便利にしたり、特に医学分野で多くの命を救ってきたから。
もっと一般的には、科学が持つ「客観性」や「再現性」などが信頼の源泉です。
そこで、知っているようで知らない科学が世に知れ渡るまでのステップを確認してみましょう。
本書の中で詳しく解説されていています。
必要なデータ・サンプルを集め、仮説を検証するための実験手法を立案し実践する。
恣意性を排除するため、サンプルの抽出にはランダムサンプリングという手法が使われる。
ここでは、なるべく権威のある科学雑誌が選好される
センセーショナルな大きな成果の方が目にとまる可能性が高い
寄稿した論文に詳しい別の科学者の査定。ここで矛盾点等やり取りし、質の向上を図っていく
査読者、編集長との度重なるやりとり
一般人も内容を確認することができるようになる(=世の中に知れ渡る)





上の図の「❸査読」をする人は、当該研究分野の専門家としての名誉が得られるので、相応の負担がかかる一方で、無料で行うんだって
第三者である専門家による「査読」と、科学者集団のネットワーク、権威ある学術誌によるチェックなどが、
科学の信頼の源……だったはずが、
今、この科学の信頼システムがたくさんの課題を抱えているとのこと。
「再現性の危機」が迫っている。というのが本書の内容です。
科学界に潜む衝撃の現実。再現性の危機はいかにして起こるのか
生物学分野の調査において、驚くべき事実が明らかになりました。
なんと、25本に1本の論文に画像の問題(捏造など)が見つかっている、というのです。
日本においても、小保方さんのSTAP細胞が話題となりました。
ヒトの細胞を弱酸性の溶液に浸し物理的な圧力など軽度のストレスを与えるだけで、
簡単に多能性幹細胞が生成できるという世紀の大発見。
ネイチャーという一流学術誌に掲載されましたが、論文で解説されている通りの手順を踏んでも、「再現」できず、
結局は画像を初め、多くの捏造がなされていた。という事件ですね。
なんと、ファスト&スロー、プロスペクト理論で有名なダニエル・カーネマン(ノーベル賞科学者)の論文でも、
その一部に誇張が見られ、結果として、再現性が欠如したものがあったとのこと。。。



いったい、何を信じればいいんだろう……
特に大きな問題となるのは「医学分野」。
間違った情報に基づいて処置をした結果、多くの命が危険に晒されることになってしまいます。
なぜ、再現性のない科学論文が世に出てしまうのか。
本書はこの点に数百ページを割いています(めちゃくちゃ読み応えあり)。
再現性の欠如を引き起こす原因とは……
原因1 科学者を蝕むバイアスの深い闇
多かれ少なかれ、どのような科学者も自分の仮説を証明したいというバイアスを持っています。
これが原因で、データが歪められたり失敗した実験結果は隠蔽されたり、と誤った解釈を与えかねない論文が
世の中に発表されてしまうとういことが発生します。
例えば、科学者が
- 自分に都合のいいデータだけを選択する(詐欺)
- 失敗した実験結果(=仮説に沿わない結果)は公表しない(バイアス)
- 実験手法や統計的解釈自体が間違っている(過失)
- 有意な結果を殊更に強調(誇張)



心理学でいう確証バイアス。自分にとって都合の良い情報ばかり集めてしまうという……人間である以上避けられないバイアスです
原因② 「研究資金の確保」と「名誉欲」に取り憑かれた科学者
国や行政機関より資金を得て研究を継続していく必要が科学者にはあるため、
世界でも権威のある学術雑誌に自身の論文が掲載されたいというインセンティブが湧きます。
この研究資金を確保するための条件は、「学術誌への掲載件数」などであるため、科学者によっては、
学術誌への掲載件数を稼ぐため、研究成果を小出しにする「サラミスライス」と呼ばれる手口を使う人もいる……
また、本来は科学の信頼性を担保すべき「査読者」と、
「論文の執筆者」が同一人物で、査読の意味をなしていないケースも。。。



信じがたい…..
原因③ 学術雑誌は世の中にインパクトのある論文を掲載したい
そして、出版社である学術雑誌側にも問題が。
それは、雑誌の販売部数を伸ばすため、インパクトのある論文を掲載しがちであるという問題です。
大衆ウケしやすい研究テーマであったり結果の注目度ばかりを重視することで、
科学の正確性を犠牲にしてしまう傾向が出版社に働くのです。
また、学術雑誌のオープンアクセス化が進む中において、
ハゲタカジャーナル (predatory journal) と呼ばれる粗悪学術誌も数多く存在することが知られています。
ハゲタカジャーナルは、十分な査読を行わず掲載料収入を目的とする雑誌であり、
論文の正当性や質が十分に保証されないまま論文が公表するため、科学の世界で大きな問題となっています。
このように、科学の信頼性を損なう仕組みは至る所に蔓延しています。
科学の未来へ向けた提案
科学の信頼を揺るがす事実を詳細に示していることだけでも読む価値があると思いますが、
この本の良い点をさらに付け加えると、
課題提起して終わりではなく、打ち手や改善策まで提唱している点になります
詳細については本書をお読みいただければと思いますが、以下のようなことが1つの解決策として提案されています。
- 外部監査の導入
- AIアルゴリズムによる客観的な検証
- ネガティブな研究結果の積極的な公開
- 再現性を重視する研究文化の醸成
とはいえ、この対策だって完璧ではない中で、次の言葉が胸に刺さったので引用しておきます。
科学は絶対的な真理ではありません。
Sience Fictions
それどころか、常に修正と改善の過程にあるダイナミックな営みなのです。
重要なのは、批判的思考を持ち、常に疑問を投げかけ続けること。
科学的な知見は絶対ではなく、現在の最良の理解であることを忘れてはいけません。
最後に
この本は、科学に対する見方を根本から変える衝撃の一冊。
科学の複雑さ、脆弱さ、そして同時に未来をより良いものにしていくための可能性を明らかにします。
科学に興味はある方におすすめしたいのはもちろんですが、
逆に興味のない方にとっても、ほとんど未知の業界の裏話的な要素がたっぷりですので、楽しめると思います。
最近は、250ページを超える分厚い本は好まれないらしいです。
そのような中、本書は448ページにも及びます。
出版社のダイヤモンド社も、「売れる」と自信を持って出版しているのだと推察しますが、
実際に興味深く読ませてもらいました。



最後まで読んでくれて、ありがとうございました〜。
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