行動経済学が今熱い。
GoogleやAmazon、NetFlixなど、世界の名だたる企業が、行動経済学を専門とするチームを立ち上げており、人材の争奪も激しさを増しているといわれています。
この行動経済学という学問は一体なんなのか。
この新しい行動経済学という学問を、体系だって解説してくれているのが、本書「行動経済学が最強の学問である」です。
先週、D・カーネギーの古典的名著「人を動かす」を読んで、
「結局、ビジネスの基本は人の行動を変えることなんだよなぁ」と再認識。
以前から興味のあった行動経済学について知りたくなり、評判の良かった本書を手に取りました。
この記事を書いているGeroge(父)は、都内在住のサラリーマン(管理職)。
通勤電車のほぼ全てを読書に費やし、ビジネス書を中心に年間100冊程度の本を読んでいます。(プロフィール)。

行動経済学の主要な理論が体系的にまとめられているので、行動経済学の入門書として最適
- 行動経済学を体系立てて理解したい方
- 自分の思考のクセを知ることで、より最適な意思決定をしたい方
- マーケティング業務に従事している方
\ それでは、いってみましょう


行動経済学は「イケてる」学問
なぜ、今行動経済学なのか
今、アメリカの大学では行動経済学を学ぶ人が増えています。
なぜ、行動経済学なのかというと、「経済活動」は、結局のところ人の行動の積み重ねであるという認識が広まってきたから。
GoogleやAmazonといった世界的な大企業が、こぞって行動経済学をビジネスに取り入れてきており、これからのビジネスマンには必須の学問となりつつあります。



人の行動を研究する学問。面白そう
経済学と行動経済学
行動経済学の本質を理解するには、伝統的な経済学と比較するのが近道です。
以下が本書の至る所で解説されている経済学と行動経済学の違いや特徴になります。
これを頭に入れて読み進めていきましょう。
経済学 | 行動経済学 |
---|---|
主に資源配分や市場メカニズムを対象とする | 主に個人の意思決定や行動を対象とする |
人は常に合理的な判断が可能 | 人は状況や感情に左右される非合理的な生き物 |
情報が多けば多いほど適切な判断が可能 | 情報が多すぎると適切な判断ができなくなる |
アダムスミスの神の見えざる手 (1776年:国富論) | ダニエル・カーネマンが最初に提唱 (1979年:プロスペクト理論) |



行動経済学を端的に表現すると、
行動経済学 = 経済学 × 心理学
となります
人が非合理な意思決定を行なってしまう3つの要因
行動経済学では、人は合理的な意思決定を行うことが難しいとしていますが、
人はなぜ非合理な意思決定を行なってしまうのでしょうか。
行動経済学の本質でもある、非合理な意思決定のメカニズムとして、本書では以下3つの観点を掲げています。
- 認知のクセ
- 状況
- 感情
人間は、物事を認知する際のクセ(性質)があり、外部の状況や内部の感情によって意思決定を行なっている。
本書では、数多く存在する行動経済学の理論をこの3つのカテゴリーに分類し、体系化した上で解説してくれているので、すぅーっと頭に入ってきます。



ほんとわかりやすかった!


1つずつ要点を絞って紹介しますね。
認知のクセ(ココがポイント
)3つのカテゴリーに分類した際に、最初に押さえておくべきものが、人が程度の差はあれど備えている「認知のクセ」。
その中でも、「システム1 vs システム2」が土台となる部分です。
システム1(直感) vs システム2(論理)
人間の脳は、情報を処理する際に2つのシステムを使い分けているというのがこの理論。
2つのシステムとは、「直感」と「論理」です。
システム1が直感、システム2が論理。
2つのシステムの特徴は以下のとおり。
システム1(直感) | システム2(論理) |
---|---|
直感的で瞬間的な判断 エネルギーを消費しない 簡単な決定や日常的な行動で発動 自動的・画一的 | 注意深く考えたり、分析する 精度の高い意思決定 複雑な問題や計画的な行動で発動 個々の事象に応じた個別対応 |
災害発生時や命が危険にさらされている状況では、システム1により瞬時に判断した方が良いケースがあります。
一時が万事システム2が発動していると、時間がかかりすぎて脳がパンクしてしまいます。
なので、このシステム1とシステム2については、どちらが優れているということではなく、人にとって必要な思考のプロセスであると認識することが大事な出発点となります。
ただし、システム1(直感)により瞬時に判断して、それが偏見や思い込みとなって誤った意思決定をしてしまうこもあるため注意が必要です。



僕はシステム2(論理)派



私はシステム1(直感)派



著者曰く、どちらか一方のみで意思決定しているということはなく、常に2つのシステムがせめぎ合って意思決定を行なっているというのが実態ということでした
それでは、人はどんな時にシステム1(直感)を発動しやすいのでしょうか。
システム1を発動しやすい状況とは
ある研究の結果として、本書で紹介されているのが以下6つのシチュエーションです。
引用:行動経済学が最強の学問である
- 疲れているとき
- 情報量・選択肢が多いとき
- 時間がないとき
- モチベーションが低いとき
- 情報が簡単で見慣れすぎているとき
- 気力・意思(ウィルパワー)がないとき



ビジネスパーソンは特に忙しく疲れていますし、定常的に情報の海に溺れています。
これを踏まえると、本来はシステム2(論理)で意思決定すべきことなのに、システム1(直感)で意思決定してしまう危険にさらされていると言えます。
この点は、しっかりと意識しておかないと怖いですね
このシステム1とシステム2を題材にした「ファスト&スロー」も面白いので読んでみるといいかも。
直感は早いので、「ファスト」、論理は遅いので「スロー」となります。



行動経済学の父と呼ばれるダニエル・カーネマンの著書です


このシステム1(直感)を要因として生まれる認知のクセとして、本書では以下の理論が紹介されていますので、自分の備忘も兼ねて簡単に書き記しておきます。



ビジネスで使えそうな観点で、おすすめ度を⭐️で評価しています
システム1から派生する認知のクセ
埋没コスト(サンクコスト) おすすめ度:⭐️⭐️⭐️
これまでに費やした時間を惜しむばかりに、何かを取りやめるといった合理的な判断ができなくなるという理論
機会コスト おすすめ度:⭐️⭐️
ある選択肢を選んだ場合に、その選択によって失われる代替案の中で最も価値の高いものを指します。埋没コストとセットで覚えると良い
ホットハンド効果 おすすめ度:⭐️
過去の成功が未来の成功に直接影響を与えるわけではないにも関わらず、次も成功すると判断してしまうこと
確証バイアス おすすめ度:⭐️⭐️⭐️
何かを思い込んだら、それを証明するための根拠ばかりを集め始めてしまい、逆にそれと矛盾する情報を無視したり軽視する傾向のこと
真理の錯誤効果 おすすめ度:⭐️⭐️
明らかに間違っているとわかっていることも、何度も見聞きしているうちに、真実であるように錯覚してしまう心理的なバイアスのこと
フットインザバイアス おすすめ度:⭐️
人々が小さな要求に応じた後に、その後に大きな要求をされた場合に、応じやすくなる傾向のこと
概念メタファー おすすめ度:⭐️
人間の五感が意思決定に影響を与えること
以下は、「時間」が認知のクセに影響を与えている理論です。



かなり興味深い内容でした
双曲割引モデル おすすめ度:⭐️⭐️⭐️
人は将来よりも今に重点を置いて意思決定しようとする傾向のこと
計画の誤謬 おすすめ度:⭐️
楽観バイアスと解釈レベルの理論により、計画を甘く見積りがちになる傾向のこと
快楽適応 おすすめ度:⭐️⭐️⭐️
同じことを繰り返すと、最初は楽しいけれど、だんだん楽しさが薄れてしまう現象のこと。逆もまた然りで、嫌なことも時間の経過とともに慣れること



嫌なことはその逆。勉強は集中的にやって、早く慣れるようにしたほうがいいね(習慣化)!
デュレーション・ヒューリスティック おすすめ度:⭐️⭐️
サービス内容それ自体よりも、それに要した時間で評価してしまう認知のクセ



これらのバイアスは非常に厄介。完全に排除することは難しいので、まずは認識することから始めましょう
状況
下の図を見てください。
AとBのどちらの横棒が長いでしょうか?





Aに決まっているでしょー



残念!正解はAもBも同じ長さなのだ
たまに見かけるこのクイズ。
目の錯覚がよくわかる事例として見かけますが、人って常に周りの状況に影響を受けているのだなということがよくわかります。
人の意思決定も一緒。
先ほど紹介したように、ただでさえ元々備わった厄介な認知のクセがあるのに、
外部の状況からも大きな影響を受けてしまうのです。
人は状況に「決定させられている」
状況が人の意思決定に影響を与えている事例はたくさんあります。
例えば、「天気の良し悪し」であったり、「周りに人がいるかどうか」、「人や物の位置や順番」など。
人の意思決定は多くの状況の影響を受けているという調査結果が数多くあります。



多くの人と接して評価する必要がある採用面接の場合、1番最初か1番最後が優位に働く傾向にあるのだとか……



運も実力のうち
人は「自ら意思決定している」と思いがちですが、実は“状況”に「決定させられている」のです。
選択肢が多すぎると選択できない
人を取り巻く状況の観点で重要な概念として、“情報オーバーロード”が解説されています。
情報オーバーロードとは、「多すぎる情報のせいで、人が非合理な行動をしてしまう」こと。
人間は、システム1(直感)で意思決定してしまいがちな非合理な生き物なので、
たくさんの情報から1つのベストアンサーを導くことはできません。
逆に、多すぎる情報は人を疲れさせ、意思決定を妨げる方向に働きます。



アメリカでは、情報のオーバーロードが生産性を著しく阻害しているとするデータや、心理的・精神的な病気につながる、といった研究もあるようです



現在は、情報過多な時代。
意識的に情報を絞るという考えを持っておかないとしんどくなっちゃうね
多くの企業が、情報オーバーロードというストレスに目をつけていて、消費者の選択をサポートして購買行動に繋げる工夫を凝らしています。
例えば、Amazonは、膨大なデータを活用したアルゴリズムにより、おすすめ商品を表示したり、価格順、新しい順、人気順などを駆使して商品を表示していますし、
TicTokは、何も選ばずに動画が流れ出す「最初から選択されている」デフォルト状態を作り出しています。
このように人々が選択を行う際の環境や選択肢の提示方法が、実際の選択にどのような影響を与えるかを考えることを“選択アーキテクチャ”と呼びます。



情報過多な時代には、いかに効率的に選択していくか(選択させるか)が重要なポイントなんですね
以下には、本書で紹介されている状況に紐づく行動経済学上の理論の一部を記載します。



ビジネスで使えそうな尺度でおすすめ度を⭐️で表しているよ
系列位置効果 おすすめ度:⭐️⭐️
情報を覚える際に、その情報が提示された順番によって記憶の定着や再生に影響を与える現象のこと。この効果は、特にリストなどの順序に意味がある情報を覚える際に顕著に現れる



苦手なプレゼンテーションは、最初か最後にやるようにしましょう!
単純存在効果 おすすめ度:⭐️⭐️⭐️
相手に接する回数が増えることで、相手に対しての警戒心が薄れて好感度や評価が上がるという効果



嫌いな上司ほど、接触回数を増やすようにしましょう!シンドイけどねw
過剰正当化効果 おすすめ度:⭐️⭐️
自分自身を守るために、成功や失敗を都合よく解釈してしまう心理的な傾向のこと



言い訳は大概にこれにあたります。自分の過ちを認めることなしに、成功はないと肝に銘じましょう
プライミング効果 おすすめ度:⭐️⭐️
提示された刺激(プライマー)の影響によって人の行動が変容する事象のこと



少しの工夫で、結果を大きく変えることができるんだね
フレーミング効果 おすすめ度:⭐️
情報や選択肢が提示される方法によって人々の意思決定や判断が変わってしまう現象のこと
プロスペクト理論 おすすめ度:⭐️⭐️⭐️
人々はリスクや報酬を受け取るときに、どのように情報を捉えるかで感情や判断が変わるということ。



ギャンブルで負けが混むとさらにお金を注ぎ込むんでしまう話もプロスペクト理論で説明できます
おとり効果 おすすめ度:⭐️⭐️
選択肢の中に「おとり」と呼ばれる極端な選択肢を加えることで、他の選択肢を選びやすくする効果のこと



顧客に企画提案する際は1つだけではなく、あえて“おとり”となる提案も含ませるといいですね
アンカリング おすすめ度:⭐️⭐️⭐️
意思決定をする際に、以前に得た情報や提示された数字などが、その後の判断に影響を与える心理現象のこと



両親とのお小遣い交渉は、高めの金額からお願いするのがポイントだよ



部下の評価の基準が昔の自分(アンカー)になっていることはありませんか?
これもアンカリング効果の1つです
パワーオブビコーズ おすすめ度:⭐️
物事の決定について、その理由を添えると説得力が増すこと
自立性バイアス おすすめ度:⭐️⭐️⭐️
人々が自分自身の状況をコントロールしたいと感じる心理的傾向。個人や組織の成長に寄与する重要な要素であり、適切に活用することでポジティブな影響をもたらす



子供にお皿洗いをお願いする場合は、
「お皿を洗って」とお願いするよりも、
「スポンジで手洗いする?それとも食洗機で洗う?」と選択肢を与えてあげると、気持ちよくやってっくれます



上司に企画提案する際は、
「この企画やらせてください!」よりも、
「この企画をやりたいのですが、AとBどちらの方法が良いと思いますか?」と選ばせると、自立性バイアスが刺激されて承認されやすくなります
感情移入ギャップ おすすめ度:⭐️⭐️
自分の行動や意思決定に及ぼす感情やその他の内的状態の影響を過小評価してしまう事象。特に、ある意思決定をしたときとは異なる感情状態にあるときに起こりやすい



人間は生き物なので、最初に状況を作って、やらざるを得ない方向に持っていくというのが1つの方法。
ダイエットの場合は、夜にジムに行く予約を朝のうちにしてしまう。
満腹時に夕食を買い込んでおく、などが考えられるね
感情
「人間は感情の生き物である」といわれますが、人の意思決定にはその時の“感情”が大きな影響を及ぼしています。
感情には「喜怒哀楽」といったわかりやすい「エモーション」のほか、複数の感情が複雑に絡み合って発現する淡い感情「アフェクト」が存在。
人が頻繁に感じるのは淡い感情である「アフェクト」の方なので、行動経済学ではアフェクトに注目した理論が多くなっています。
ポジティブアフェクトは、前向きで積極的な行動につながりやすい一方、ネガティブアフェクトは警戒心や自己保護の観点で回避的な行動に繋がりやすいという特徴がある。
いつもポジティブアフェクトだけで過ごすことができればいいのですが、人であればネガティブアフェクトを避けるのは難しいとされていて、
本書ではネガティブアフェクトを克服するコツが紹介されています。
- ネガティブアフェクトをまずは受け入れる(気持ちを声に出して言う)
- ネガティブアフェクトをポジティブアフェクトへ変換する(私はAさんに負けている。負けないように頑張ろう!)
- 最初から目標を立てることをやめて、小さなことから始めてみる。
- 継続できたら自分を褒めることを習慣にする etc……



人間の感情は非常に複雑。感情について詳しく知りたい方は、「感情は、すぐに脳をジャックする」がおすすめ。
プルチックの感情の輪は自分の感情を知る上でとても参考になりますよ
感情に付随する行動経済学理論もいくつか記載しておきます。
心理的所有感(保有効果) おすすめ度:⭐️⭐️
自分が保有するものや、所有していると感じることが出来ることに対しては、実際の価値よりも高い評価を与えてしまうという心理現象のこと



保有効果や心理的所有感をうまく刺激すると、モチベーションの向上につながります。マネジメントに活用できそう
目標勾配効果 おすすめ度:⭐️⭐️⭐️
目標が間近になることで達成への興奮が高まり、より早く目標を達成しようとする意欲が増す心理的現象



マラソンもそうだよね。スタートしたばかりよりも、ゴールが近くなるにつれてあともう少し!頑張ろう!という気持ちになります
まとめ
最後に、本書で紹介されている理論についてとてもよく整理されている図がありますので紹介します。


行動経済学は新しい学問であり、体系がまだ未熟であると言われていますが、こんな感じでまとめてくれるとほんとわかりやすいですよね。
繰り返しですが、行動経済学の要諦は、
人間は、物事を認知する際のクセ(性質)があり、
本書の内容をもとに要約
外部の状況や内部の感情によって意思決定を行なっている。
ということなのかなと感じました。
このことをしっかりと頭に刻んみつつ、本書で紹介されている理論を習熟していけば、仕事もプライベートも今よりもっとうまくこなしていくことができそうです。
行動経済学に興味を持ったら、まずは本書を読んでみましょう!
記事では紹介しきれていない多くの研究や事例も豊富なので、よりイメージが湧くこと間違いなしです。



行動経済学って思っていた以上に面白い学問。是非とも使いこなしていきたい!
D・カーネギーの「人を動かす」と一緒に読むと参考になりますよ!



最後まで読んでくれて、ありがとうございました〜。
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