2023年も世の中いろいろとありましたが、皆さんにとってはどのような1年となりましたでしょうか?
私にとっては、新型コロナウィルスによる世界的なパンデミックという異常事態から解放された1年という印象が強いですね。
本書「コード・ブレーカー」は、
世界を新型コロナウィルスの脅威から救ったmRNAワクチン(メッセンジャーRNA)の基礎技術であるゲノム編集技術「クリスパー・キャス9」の開発者であり、
2020年にノーベル化学賞を受賞した生物学者ジェニファー・ダウドナの評伝。
著者は、評伝を書いたら世界一と称されるウォルター・アイザックソン。
代表作には、世界的なベストセラー「スティーブ・ジョブズ」や「レオナルド・ダヴィンチ」などがあります。
最近では、テスラの創業者「イーロン・マスク」の評伝が出版されました
さまざまな物議を醸し出すも、今回のパンデミックからの解放はmRNAワクチンの存在なしには不可能でした。
とはいえ、「mRNAワクチンって結局何なの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
本書は、ジェニファー・ダウドナ(女性です)の人生を通じ、いかにしてmRNAワクチンが生まれたのか、その基礎となるゲノム編集技術(遺伝子を書き換えること)の発展とその経緯などが詳述されています。
正直、まったく知見のなかった世界のお話なので、読み切れるか不安もありましたが、そこはさすがのアイザックソン。
ドラマチックな展開で小説を読んでいるような雰囲気で一気読みできました
- mRNAワクチンについて興味がある方(←意外とわかりやすい)
- 世界を変える可能性を秘めたゲノム編集の今に興味がある方(←倫理上の課題も)
- トップクラスの科学者たちの想いに触れてみたい方(←人間関係はどの世界も複雑)
この記事を書いているGeroge(父)は、都内在住のサラリーマン。通勤電車のほぼ全てを読書に費やし、年間100冊程度の本を読んでいます。また、家庭菜園も大好きです(プロフィール)。
\ それでは、いってみましょう
初めに用語の解説から
本書を読むにあたって、事前に知っておくと理解がさらに深まって良いかなぁと思う用語解説です。
以下は、本書を読みながら都度ChatGPTで調べた内容です。事前に知っておくと理解が進みますよ
DNA(正式名称:デオキシリボ核酸)
RNA(正式名称:リボ核酸)
ゲノム編集
クリスパー・キャス9
ガイドRNA
細菌
ウィルス
細菌とウィルスは全く異なるんだよ
ジェニファー・ダウドナが本作の主人公(あらすじ)
本作の主人公であるジェニファー・ダウドナは幼い頃から好奇心旺盛で、指を触れた「おじぎそう」が縮む様子を見て、その理由が知りたくてしょうがなかったそうです。
6年生の時、ジェームズ・ワトソンが著したDNAの構造を解明するまでの回想録、「二重らせん」を読んで科学者になることを決意。
その後、ハーバード大学ではDNAが保持する情報に基づき、触媒的な役割を担うRNAの研究を開始。
多くの科学者との協力と競争を経て、特定の遺伝情報を編集するための「クリスパー・キャス9」を開発するに至りました。
本書は、クリスパー・キャス9が新型コロナワクチンとして大活躍したmRNAワクチンの基礎技術として活用されている功績が評価され、2020年にノーベル化学賞を受賞するまでのダウドナの人生を記した物語です。
さらっとまとめてしまいましたが、中身はとても濃密です。
最大のライバル、中国人科学者、フェン・チャンとの息を呑む攻防。
共同でノーベル賞を受賞したフランス人生物化学者シャルパンティエとの友情と微妙な距離感。
自らが科学者となるきっかけとなったジェームズ・ワトソン(晩年は人種差別的な発言を繰り返す)とのやりとりなど……
偉大な科学者が1人の人間であることを感じさせる数多くのエピソードが語られていきます
本書を読むにあたっては、クリスパー・キャス9というゲノム編集ツールがどのようなものか知っていた方が楽しめると思いますので簡単に解説します。
クリスパー・キャス9とは
ダウドナが開発した「クリスパー・キャス9」と呼ばれるゲノム編集技術(遺伝子情報の書換え技術)の仕組みは以下のようなものとなっています。
かなりデフォルメして説明すれば、DNAをハサミのように切断できるキャス9という酵素を、ある特定の場所までガイドRNAが誘導し、DNAを書き換えちゃうのです。
あくまで自分の理解です。ちゃんとした説明は然るべきサイトや文献をあたっていただければと思います
このクリスパー・キャス9の技術を利用したものが新型コロナウィルスの検査薬であり、mRNAワクチンということのようです。
本書のクライマックスは、これまで、特許取得のために秘密裏で競争していた科学者たちが、新型コロナウィルスという人類共通の敵に対し、ダウドナを中心にワンチームとなって立ち向かう姿が描かれています。
ということで、次はmRNAワクチンについて簡単に。
mRNAワクチンとは
従来のワクチンは、標的ウィルスを不活性化した成分を経口あるいは注射で人体へ投与し、ヒトの免疫システムを始動させ、ウィルスに対する抗体を作るように促すアプローチでした。
この方法はウィルスを鶏卵の中で培養する必要があり、ワクチンの開発と培養に長時間を要するという欠点がありました。
このため、世界的なパンデミックには対応しきれないという課題が……。
毎年、インフルエンザワクチンの準備が間に合わないとかニュースになるのは、こういう理由だったんだね
一方、mRNAワクチンは、DNAもしくはRNAを直接体内に投与し、クリスパー・キャス9を活用してウィルスまで運び、ウィルスのDNAを直接書き換えるというもの。
見事コロナウィルスに勝利することができたのです。
本書を読んでmRNAワクチンの仕組みがようやく理解できた気がしました。ただ、DNAを編集するとか、なんだか怖い技術であるとの印象も受けますよね
科学者の間でも、長年クリスパー・キャス9をはじめとしたゲノム編集について、多くの倫理的な議論が尽くされています。
この辺りのテーマも本書の要諦と言える部分で、多くのページが割かれていて興味深いです。
ゲノム編集を巡る倫理問題
クリスパー・キャス9を活用すれば、多くの遺伝的な病気が克服できることになる一方で、
人間の知能や運動能力、最終的には兵士の能力向上など、世代を超えたコントロールができるようになってしまう。
どこまで許されるのか。神の領域ではないのか。
ゲノム編集技術が生まれた頃から科学者の間で警鐘を鳴らしてきた歴史があります。
一度DNAを編集すれば、世代を超えて遺伝していくものがあり、ヒトという生物自体の根幹を揺るがす事態にもなりかねません。
実際、2018年には中国のとある科学者が倫理ガイドラインを無視してクリスパーベイビーを誕生させるという愚を犯し、世界中から非難を浴びた事件がありました。
ゲノム編集は、ヒトという種が持つ多様性を失わせ、将来的には種の衰退を招く懸念もあります。
ダウドナはこれらの倫理問題について「慎重な前進」という立場をとっています
多様性がいかに重要かは、「多様性の科学」を読むといいですよ
まとめ
本書コードブレーカーは上下巻合わせて600頁を超える大作となっています。
本記事では内容の一部しか紹介できていませんが、本書の帯で大隈良典さんが推薦されているとおり、「生命科学の最前線を知る絶好の書」となっています。
ただの解説書ではなく、ダウドナという一人の人間を通じた目線でさまざまな葛藤が綴られているため、
感情移入しながら学ぶことができる点が本書最大の特徴であり良いところ。
読んで損なし。心からおすすめできる1冊です。
本書を読んで、ウィルスや細菌に興味が湧いてきました。この辺りのテーマで別の本を読んでみるつもりです。
あなたもぜひ、読んでみてください
最後まで読んでくれて、ありがとうございました〜。
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