今回は、なんでも科学にしてしまうマシューサイド待望の最新作「多様性の科学」について紹介します。
マシューサイドの本は「才能の科学」、「失敗の科学」と読んできて、本書が3冊目です。
多様性を英語でいうと「ダイバーシティ」。ここ数年は世界中でバズワード化していてお疲れき気味の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私もその一人。会社では、「女性の管理職比率30%を目指す」、「よし、まずはみんなでワイガヤ(ブレスト)しよう!」などなど、ダイバーシティがまるで水戸黄門の印籠(古いか😅)のような力を持っているように感じます。
管理職や役員への登用は能力主義(能力が高い人)が当たり前でしょ?、と思っていましたがこの本を読んで考えが変わりました
この本を読めば、世界中で多様性が求められている理由がよーく理解できます。やはり、注目されるに足る理由がありました。
この記事を書いているGeroge(父)は、都内在住のサラリーマン。通勤電車のほぼ全てを読書に費やし、年間100冊程度の本を読んでいます(プロフィール)。
- 多様性、ダイバーシティにちょっと食傷気味な方
- 多様性がなぜ注目を集めているのか、その理由を知りたい方
- マシューサイドのファン
\ それでは、いってみましょう
多様性には2つある
これまであまり意識していなかったのですが、多様性には大きく分けて2つあります。
1つは、「人工統計学的な多様性」です。
これは、「男性、女性、LGBT」、「若い人、老人」、「黒人、白人」、「日本、アメリカ」というように性別、年代、人種や国籍等で違いを区分した多様性のこと。
就職・就業の公平性や機会の均等を確保するためにとても重要なもので、多くの企業や団体で推進されているダイバーシティの多くがこちら。
女性の積極採用、女性の管理職比率向上などがこれにあたります
ただし、多様性を組織の本当の強みとするためには「人工統計学的な多様性」を追い求めるだけでは不十分で、
「認知的多様性」も実現していく必要があります。
「認知的多様性」とは、「組織や集団内に、異なる認知スタイル、能力、視点、知識、経験、思考プロセスなどが存在する状態」のことです。
「女性管理職比率を向上しよう!」という取組みは、「人口統計学的な多様性」のことであって、組織にとって本当に必要となる「認知的な多様性」ではないよね?
私もこんなふうに感じました。
ただ実際には、性別や国籍が違えば多様なキャリアやバックグランドを持った人たちが必然的に集まるので、認知的多様性も結果的に高まるようです。2つの多様性には正の相関関係があるんですね。
多様性がどうして組織の強みになるのか?
多様性のない画一的な組織と多様性のある組織の違いを理解するため、こちらのイメージ図を見てください。
これは、能力主義に基づき優秀な人だけを集めた画一的な組織のイメージ。
外の四角い枠は問題空間といって、この中には問題を解決するために有効な概念や知識が存在します。この空間を満たすことが問題解決につながると考えてください。
一定のフィルターをかけて(学歴など)優秀な人だけを集めても、認知能力や考え方、発想が似ているため、こちらの図のように問題空間の一部しかカバーできないといったことが発生します。
一方、次の図はバックグランドもキャリアも様々な人たちを集めた多様性のある組織のイメージ。
こちらでは、組織や集団に性別、国籍、年齢などの多様性を持たせることにより、問題空間のほとんどをカバーすることができています。
この状態だと、問題の解決に向けた漏れもなく、力強い解決策やアイディアが生まれそうですよね。
スラムダンクの宮城リョータを5人揃えても勝てない。スピード、パワー、シュート力などバランス(多様性)がないとね
機械学習やディープラーニングの世界においても、単一のモデルより複数のモデルを組み合わせたアンサンブル学習の方が精度が良くなることが多いです
多様性はとっても大事なんだね
CIAに多様性があれば、同時多発テロは防げたのか?
戦後アメリカにおける最大のテロといわれる、9.11同時多発テロ。これを未然に防げなかった原因は、人材の多様性を著しく欠いた当時のCIAの組織構造にあったと言われています。
国家の安全に責任を負う世界一の情報機関社員のほとんどが、アメリカの中流階級出身者で占められており、多様性が欠如していました。
この多様性の欠如こそが、同時多発テロに通じる多くの情報に接していながらこれを軽視し、最悪の惨事を未然に防ぐことができなかった最大の原因であると指摘されています。
当時、人材の多様性欠如を指摘されたCIAは、
「国家の安全を差し置いて、政治的な正しさ(多様性を求める)を優先するなどはあってはならない。能力主義がCIAの使命を達成するために必要な考え方である」と反論。
人材の多様性(人口統計的、認知機能的問わず)が組織に大きな力を与えることに気づいていなかったのです。
同時多発テロが発生した2001年以降、ダイバーシティが注目を集めるようになる大きな契機となりました。
多様性が担保できた次に必要なのは尊敬型リーダーシップ
組織の多様性が担保できたとしても、その強みをしっかりと発揮するには、周囲の意見を聞き入れない支配型のリーダーシップでは意味がありません。
決定事項をそのまま実施するのではなく、状況に応じて考え直したり、新たなアイディアを出したりする必要がある場合は、支配型ではうまくいかなくて、誰もが自由に意見を出し合える尊敬型のリーダーシップが必要。
目的やゴール等、なすべきことが明確な場合は支配的なリーダーシップが効率的。一方、状況が複雑な問題に接した時は、多様な意見を引き出し聞き入れる尊敬型のリーダーシップが必要
支配型と尊敬型を使い分けられるリーダーが最強
イノベーションの鍵も多様性にある
多様性はイノベーションにも必要不可欠です。
アメリカのフォーチュン500社の43%が移民もしくは移民の子孫によって創業あるいは共同創業されている事実を踏まえると、アメリカで多くのイノベーション企業が生まれる背景とアメリカの人材の多様性には関係がありそうです。
Google(アルファベット)が提唱した心理的安全性も多様性の発揮を促すための考え方として有名ですよね。
目まぐるしく変化する外部環境の中にあって新たなイノベーションを生み出すためには、多様性の力を存分に発揮することの重要性を認めた上で、誰もが上司や同僚の顔色を気にすることなく、自由に発言することができる社内・チーム内環境が必要であるとの考え方。
自由に意見を言い合える職場は活気がありますよね
まとめ
マシューサイドの5年ぶりの新作とあって大変楽しみにしていたのですが、期待を裏切らない内容でした。
CIAやエベレストの登山チーム、航空機事故のケースなど、多様性にまつわる事例やエピソードがたくさん語られていて、説得力があるのはもちろん、小説のように面白いんですよね。
こちらの記事で紹介した内容以外にも、多様な学生が集まる大規模な大学で、なぜか画一的なネットワークが生まれやすかったり、スティーブ・ジョブズがイノベーションのためにどのように多様性と向き合っていたのか、など多様性にまつわる論点がたくさん散りばめられています。
社会で声高に叫ばれている多様性に興味を持ったら、まずはこちらの本を読まれることを強くお勧めします。
人類が地球上で現在の地位を保っているのは、個人個人の能力というよりも、多様な集団であるからだ。人間の強みは多様性である
by マシューサイド
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