GAFAMを中心としたITプラットフォーマが提供するモノ・サービスばかりが売れる今日この頃。
一人の消費者として、その利便性を享受しつつも、なんだか世の中の多様性が失われていくような漠然とした不安も感じます。
ジョブ理論は、ハーバード大学の元教授で多くの経営者が愛読している「イノベーションのジレンマ」の著者クレイトン・M・クリステンセンが提唱したマーケテイング新理論。
マーケティング戦略の原点が「顧客ニーズの理解」であることは所与の事実ですが、ジョブ理論では、顧客自信も気づいていない潜在的なニーズまで踏み込んで理解する必要性について解説しています。
なんだか難しそうな本だけど、ぼくにも理解できるかな?
たくさんの事例をもとに解説されているから、そんなに身構えなくても大丈夫
ちなみに、マーケティングってそもそも何?という初学者の方には、最低限の基礎理論がドラマにもできそうな面白いストーリーで身に付く「ドリルを売るには穴を売れ」もおすすめです。
- マーケティングの基礎理論から一歩深掘りした手法を学びたい方
- モノやサービスの開発担当者、マーケティング担当者、営業担当者
- アフィリエイトブログをはじめとしたコンテンツホルダー
この記事を書いているGeroge(父)は、都内在住のサラリーマン。通勤電車のほぼ全てを読書に費やし、年間100冊程度の本を読んでいます(プロフィール)。
\ それではいってみましょう
- タイトル:ジョブ理論
- 著者 :クレイトン・M・クリステンセン
- 出版年 :2016年
- 出版社 :ハーパーコリンズ・ジャパン
- 評価 :⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(5)
ジョブ理論とは?
ジョブ理論をかんたんに説明すると、
「顧客が商品を購入する理由はジョブにある。したがって、このジョブを正確に把握することが重要である。ジョブを解決できる価値を提供すれば、顧客はその商品を購入する」という理論。
ここでいう「商品」には、モノだけでなくサービスも含まれるよ
そもそも「ジョブ」という言葉が難しいよ。仕事ってこと?
ジョブ理論では、以下を「ジョブ(仕事)」と定義しています。
- ある特定の状況において、その顧客が成し遂げたい「進歩」、のこと
- ジョブは顧客の置かれた「状況」において大きく異なる
- ジョブは機能的な側面だけではく、社会的、感情的側面も理解することが必要
普段から何気なく購入している商品、なんとなく衝動的に買ってしまった商品も、顧客はなんらかの片づけるべきジョブを満たすために購入している、と考えるのがジョブ理論の基本的な考え方です。
顧客が置かれている状況と進歩(欲求や不満)がポイントなんだね
片づけるべきジョブのために購入することを、ジョブ理論では「(商品を)雇用する」という言葉を使っているよ
我が家の子供達(3人います)は、ゲームとマンガが大好きなのですが、なぜか漫画(コミック本)の方をよく購入(雇用)します。
スイッチのソフトは高いし、彼らのお小遣いでは少し厳しいから漫画を購入しているものと思っていましたが…
最近、漫画買いすぎでしょ?このまま行くとそのうち漫画喫茶が開店できそう。長男よ、君はなぜ漫画を買うのか?
面白いから
この前、ゲームの方が好きって言ってたじゃん。
ゲームの方が好きだよ
漫画の方がお小遣いで買いやすいし、学校の友達と話題になりやすいとか?
まぁそんなところかな
ふふふ、本当はね、テレビやゲームは1日1時間までルールがあるけど、漫画は特に制限がないのが漫画を雇用する理由さ。
変なルールを追加されたら嫌だから言わないけどねー
この場合でいえば、「ゲームは1日1時間までしかできない」という点が顧客の置かれた状況。この状況で、退屈な「家の中での生活を楽しみたい」と言うジョブを漫画を雇用することで片付けているということ。
漫画を雇用することで片付けているジョブの内容については深掘りできていないですが、ゲームや漫画を通じて自分が経験したことのない「新しい体験を求めている」というところでしょうか。
活字に慣れていない子供が、活字だけの本よりも、絵本や漫画を雇用しがちなのは、物語への没入しやすい、ということかと思います。
ジョブとニーズの違い
マーケティングの世界でよく使われるニーズとジョブの違いはどこにあるのでしょうか。ここも押さえておきたいポイントです。
ジョブも大きくはニーズの一部ですが、一番の特徴は、顧客の状態までを考慮した具体性が備わっているかどうか。
例えば、「健康でありたい」、「私は食べる必要がある」、「良い父親でありたい」というのはニーズになります。
どれも顧客にとって当たり前のように重要な真実ではあるものの、顧客が、ほかでもないその商品を雇用する理由にはなっていない。ジョブとニーズの違いはこんな感じ。
ニーズ | ジョブ |
---|---|
顕在化(意識)しているもの 大きな、ぼんやりとした方向性を示すもの それだけで、全ての行動を説明することができない | 顧客自身も気づいていない潜在的(無意識)なもの 機能や実用的な要素に加え、社会的・感情的 その商品でなければならない本質的な欲求 |
顕在化している顧客のニーズから一歩踏み込んで、顧客の片づけたいジョブまで考察することが、マーケティング戦略には重要だということですね。
ビッグデータだけではなく、ジョブにもフォーカスしよう
顧客が片づけるべきジョブを理解することの重要性を説いたジョブ理論ですが、それと同時にデータだけに頼ったマーケティング戦略に対しては警鐘を鳴らしています。
昨今、ビックデータやAIの発展によってデータのみが顧客の真実を説明するといったデータ至上主義が語られることが多いです。
しかし、どんなに素晴らしいデータや分析であっても、顧客が置かれている状況が変化すれば、片づけるべきジョブも変化することには留意が必要です。
また、一見すると客観的なデータも、作成した人の恣意性が入り込んでいることがほとんど。
顧客のジョブがますます多様化していく現代においては、ビッグデータを一括りにして相関関係だけで判断するのではなく、そのデータ1つ1つから読み取れるジョブやその背景に隠されたストーリー(因果関係)に着目するジョブ理論は間違いなく必要な考え方だと感じました。
データは相関関係を把握するには適しているが、因果関係(原因と結果)はわからない。因果関係はジョブ理論で補完する
まとめ(所感)
多くの顧客のジョブを満たす商品があれば素晴らしいのですが、万人受けするサービスを展開する企業は、顧客の本質的なジョブにアクセスできず、ある特定の状況における顧客のジョブを満たすことに特化した商品に負けてしまう。
タクシー業界におけるウーバーやホテル業界におけるエアビーアンドビーなどのディスラプターの登場がその典型。
一方、顧客のジョブを読み解くことにフォーカスすれば、まだまだ商品を売るチャンスやイノベーションの芽もあるのだと前向きな気持ちにもなれました。
本書の後半には、顧客のジョブを遂行する機能を中心に組織化されているユニリーバが、顧客のジョブに上手く対処し、自社の石鹸を一大ブランドに成長させた事例がありました。
手を洗う習慣がないインドでは、年間40万人くらい近くの5歳以下の子供が下痢性疾患で命を失っている。
大人でも7秒程度しか手洗いに時間をかけない中、子供に完全に滅菌できる10秒以上手洗いをしてもらうためにはどうすれば良いか
ユニリーバでは、顧客が置かれている状況をしっかりと把握し、片づけるべきジョブを理解したことで、10秒洗うと泡の色が変わる石鹸を開発。この石鹸が子供の本質的なジョブの解決(面白がって遊ぶこと)と結びつき世界的に大ヒット。素晴らしいですよね。
マーケティングで重要なことは、顧客の立場に立ってとことん考えることを再認識できました。
これからのマーケティング戦略に、ジョブ理論は必須です。
ぜひ、本書を手にとってみてください。
ジョブ理論。読み応え抜群で勉強になりますよ。デザイン思考も補完する考え方ですねー
(クリステンセン教授が書いた本だと知らなかったことは内緒です)
最後まで読んでくれて、ありがとうございました〜
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