突然ですが、あなたは「お米」は好きですか?
毎日食べるものだし、好きも嫌いもないでしょ
農林水産省が開示している統計データによれば、主食用米の作付面積はどんどん減少していることがわかります。
戦後、日本が豊かになり、食文化が多様化し小麦食が拡大したことや、少子高齢化が進んだことなどがその背景です。
ちなみに、新規需要米というのは酒米や家畜の餌になる飼料用米です。
主食用米の代わりに新規需要米の作付は増えていますね
身近にあることが当たり前すぎて、普段は意識することのない「コメ」や「イネ」ですが、一体全体どのような植物なのでしょうか。
仕事でちょっと東北に出張することがありまして、田んぼを眺めていたら気になってしまいました。
ということで、今回は稲垣栄洋さんが書かれている「イネという植物の不思議」を読んでわかったこと、印象に残ったことを書き連ねようと思います。
この本を読み終えるとお米が大好きになると思います。
ちなみに、稲垣栄洋さんの本は中学受験の国語の問題によく採用されることで有名みたいですね。とても平易に書かれているので、小学校高学年くらいの子供でも興味深く読めるかも。
- 毎日食べるお米の正体を突き止めたい方
- 「パン」vs「米」論争に決着をつけたい方
- 植物全般大好きな方
この記事を書いているGeroge(父)は、都内在住のサラリーマン。通勤電車のほぼ全てを読書に費やし、年間100冊程度の本を読んでいます(プロフィール)。また、家庭菜園も10年くらい楽しんでいます。
\ それでは、いってみましょう
コメは日本人の一部
この本を読んで本当に良かった点は、毎日必ずといっていいほど食しているコメが日本人とってなくてはならいものであり、日本の文化に深く関わっているということがわかったことです。
そもそも、コメとはどんなものでしょうか。私がへぇーと思った点を列挙してみます。
- 米は、麦、トウモロコシとともに世界三大穀物といわれている日本人の主食
- 麦より栄養価が高い
- 実っても自然落下しない種を持つ米を発見したことが、人を人とたらしめた
- 実は水を張らなくてもイネは育つ
- 田んぼに水を引くための水路は40万キロもあり、世界10周分に相当する
- 稲は元々はインド原産といわれている。日本人が食べるのはジャポニカ米と言ってネバネバしている食味が特徴。パサパサしていると箸で掴めないから。
日本人は古来よりイネを作るために田んぼを作り、日本の原風景を作り出してきました。
田舎の田園風景を見て、「自然が豊かで、何もないところだなぁ」なんて発言しがちですが、田んぼは「自然」ではなく確かな「人工物」です。それを自然と勘違いしてしまうのだから、田んぼやコメがどれだけ日本人にとって当たり前のことなのかが痛いほどわかりますよね。
40万㎞って……昔の人たちの血のにじむような努力を感じずにはいられません。
コメと日本の歴史
今日の御飯はなにたべた?
スパゲッティ食べたよ!
なんの違和感も感じないこのやりとり。御飯とは米の飯なので、冷静に考えるとおかしなやりとりです。
これも、どれだけコメが日本人の生活に根付いたものかを実感できる一コマですが、本書では、コメと日本の歴史を紐解いています。
コメにまつわる歴史はざっくりと以下の通りです。
イネの原産は中国南部とわれているが依然確たる証拠はないらしい。
縄文時代後期に大陸から日本にイネと田んぼの技術が伝わり、徐々に日本国内に広がる。
気候変動で気温が下がったこと、田んぼを耕すための「鉄」の登場が大きく影響。
米は貯蔵することができるため、「富」という概念が生まれ、強力な社会集団が形成された。
米という「富」は、支配するものと支配されるものという階層を生むようになり、奈良盆地に大和政権が誕生。米と「富」が密接に結びつくことにより、稲作は日本全国に広がっていった
大化の改新以降、天皇を中心とした律令国家作りが進められていきます。
米の歴史と密接に係るものとして、まず「班田収授法」があります。班田収授法はすべての土地は天皇のものであり、私有を禁ずる、というものだったため、稲作の拡大を阻害することに。
そこで出たのが新たに田畑を開墾した場合、3世代にわたって所有を認めるという「三世一身法」。しかし、3世代で召し上げられてしまうのでこれも不発。稲作は広がりませんでした。
そして、満を持して登場したのが、開墾した土地は永久に所有できるとする「墾田永年私財法」です。
これが、開墾意欲を掻き立てることにつながり、全国各地で私有田を拡大させることにつながっていくことになるのです。
この私有田が「荘園」ですね!
荘園が広がっていくと、国の管理が行き届かなくなり、税の免除を受けるような土地ができてきました。税を取り立てる国司より地位の高い人に私有地を寄進するのです。これによって力をつけたのが「貴族」であり、貴族社会を支配したのが「藤原氏」となります。
一方、国司の中にも私利私欲のために過剰に税を取り立てる輩が輩出し、その国司から身を守るために農民や豪族が武装化、これが平氏と源氏に代表される「武士」となっていくのです。
鎌倉時代には「鉄」の技術が庶民にまで広がったことで、田んぼの普及スピードが格段に向上しました。
鎌倉時代に設置した各地の武士を統率する守護・地頭が後の戦国大名の誕生へとつながっていきます
奈良時代に築き上げた中央集権的な統治が徐々に難しくなって、地域毎の分散統治の時代に突入していくことに。ブロックチェーンみたいでなんだか楽しい
戦国時代といえば織田信長。信長は「兵農分離」を推し進めました。
農家が戦を行っていては米の生産が安定しないというのがその理由です。常備軍を設置したんですね。
その後の豊臣秀吉も、信長の思想を受け継ぎ「刀狩」や「検知」による兵農分離を徹底。これにより税収入が安定していくことになります。
日本の歴史上、コメは貨幣的な役割を果たしていて、コメを媒介して物が交換されていたんです。これを米本位制といいます。
そういえば、戦国大名の経済力の単位は「加賀100万石」なんていいますもんね
ちなみに、米一石というのは、人ひとりを1年養える量で150㎏のことをいいます
いかがでしたでしょうか。
コメと日本の歴史を振り返ると、その結びつきの深さがわかりますよね。
日本酒の作り方
コメといえば日本酒を想起される方もいるのではないでしょうか。
本書では日本酒のことももちろん説明されています。
あなたは、日本酒がコメからどうやって作られているのかご存知ですか。
日本酒大好きな私もなんとなくしか知らなかったので、これを知れただけでも本書を読んだ甲斐がありました。満足ですw
まず、お酒は主食用のこめ(うるち米)と異なり、真ん中が白く濁っている酒米を使う。
日本酒ができるまではざっくりいうと基本以下2ステップ。
ワインは葡萄の果実の中にある糖を直接発酵させてアルコールに、ビールは大麦が芽を出すときに作られる糖をアルコールにしているなど、基本は1ステップ。
日本酒のように2つの化学反応を同時に行うのは、世界でも珍しい醸造方法のようです。
ビールを蒸留するとウィスキーになり、日本酒を蒸留するとアルコール濃度が高まった焼酎(米焼酎)になるんだって
ちなみに、日本酒の飲み方として「熱燗(あつかん)」や「冷酒(おひや)」等があると思います。
日本酒は温度によって風味や飲み口が変わるのですが、実は5℃刻みで呼び名があることをご存知でしょうか。
5℃の「雪冷え(ゆきびえ)」から始まって55℃以上の「飛び切り燗」まで10種類。
日本酒については日本酒造組合中央会のHPが詳しく、勉強になりますので日本酒好きな方は覗いてみてください。
少し脱線してしまいました。コメの話に戻ります
田んぼの有用性
田んぼは日本の先人たちが汗水ながして、時には命をかけて作ってきた人工物ですが、人工物だからといって自然破壊を伴っているとも言えない不思議な存在なんです。
そもそも、水を張らなくてもイネは育つんのですが、なぜあえて水を張るようなことをするかと言うと、「雑草対策」の側面が大きいとのこと。
水の中から生える雑草の種類は多くないため、農作業が格段と楽になり収穫量もあがるのです。
本書では田んぼ有用性についても説明されています。
- 田んぼは水をコントロールする
- 水田は砂漠化しない
- 農業は自然を壊すが田んぼは異なる
- 田んぼは連作が可能
- 麦と比べて収量が高い
こちらも全部は紹介できないので印象に残った点を。
田んぼは水をコントロールする
「田んぼはダムの働きをする」といわれますが、日本の川は諸外国と比べてかなりな急流で、大雨が降ればすぐに氾濫するというのが常。そのため、海に近い平野部は広大な湿地帯といった様相を呈しており、農業的には価値がありませんでした。
しかし、江戸時代以降、土木技術が急速に発展したことを背景に、山間部では棚田を作り、河川の周囲には土手をつくって水路を引き田んぼをこしらえたことにより、日本の国土は生まれ変わりました。
大雨が降っても、一気に海に水が流れ込むということがなくなり、ゆっくりと時間をかけながら日本の土地の隅々を水で潤すようになったことが、田んぼの効果。豊富な地下水資源の源にもなっています。
この、水をコントロールして洪水を防ぐ機能をダムと同じ働きであるといわれている理由です
農業は自然を壊すが田んぼは異なる
一般的に農業は田畑を切り開くために森林を伐採したり、水資源を消費したり、また化学肥料散布が土壌浸食につながるため、環境を破壊するといわれています。
作物を継続して作り続けると、土壌の栄養分が枯渇し、やせた土地となってしまうんです。もちろん化学肥料で不足分を補っていますが、これだけで必要な栄養素を賄うことはできません
実際に、世界の40%の農地が土壌侵食の状態にあるそうです。
また、水資源の不足という問題もあります。世界の大河の一部では、農業用水として使いすぎたために下流部では水が断水するという状況もあるのだとか。
加えて作物が育たなくなった農地の砂漠化が進行し、土不足も懸念されている状態です。
水の惑星と言われる地球の水資源のほとんどが地下資源で、実際につかえる水は0.3%。その3分の2を農業で使っています
このように環境破壊につながる側面を指摘される農業ですが、日本の田んぼの場合は事情が異なります。
田んぼには、絶えず山から運ばれる栄養素が補充されているため、土地が荒廃するということがありません。
また、田んぼの畔(あぜ)は防砂ダムの役割を果たしており、貴重な土壌資源が流出し砂漠化するというようなこともありません。
なにより、「稲は地力で、麦は肥料で作る」といわれていて、環境にも優しい穀物なのです。
まとめ - コメは日本人の魂だ-
いかがでしたでしょうか。私は本書を読んでイネや田んぼの素晴らしさを感じることができました。
昔、東日本大震災の影響で避難区域となっていた地域を見学したことがあるのですが、たった1年管理しないだけで、田んぼの原型を留めていなかったことを思い出しました。
田んぼは当たり前の風景ではなく、先人達や農業者の方々が汗水流して造成してきた「人工物」であるということを痛感した瞬間です。
コメの歴史を振り返ると、米が余るようになってきたのは昭和30-40年代の高度成長期以降。それまでは、誰もが食べられるものではなかった。むしろ米不足が争いを生んだ歴史の連続でした。
そんなコメを作る田んぼがどんどん耕作放棄地となっている現状を見て寂しいと稲垣栄洋さんはおっしゃていますが、本当に同感です。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉も素敵ですよね。
本ブログで紹介した内容はほんの一部です。ほかにもイネやコメにまつわるエピソードがたくさんちりばめられています。とってもおすすめの本です。
稲垣栄洋さんはたくさんの本を出版されているので、他の著書を読むのが今から楽しみです。
御飯とお味噌汁が必須アミノ酸のすべてをカバーする最強の組み合わせだと知ったので、朝はご飯派に転向します(宣言)
最後まで読んでくれて、ありがとうございました〜。
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