「雑草という草はない」。日本の植物学の父と称される牧野富太郎博士の言葉です。
雑草に対してはあまり良い印象を持っている方は少ないと思います。
私もそうです。農業や家庭菜園を営む人にとっては、雑草対策にいつも頭を悩ませていることと推察します。
そんな雑草ですが、冷静に考えると不思議だらけ。何回抜いても踏んでも生えてくるし、水やりしなくても枯れません。
本書は、そんな雑草の不思議を著者の稲垣栄洋さんが丁寧に紐解き、人生の気づきにまで昇華してくれている本です。
稲垣栄洋さんの本は本当にどれも面白くて、一瞬で読み終えちゃいます。この本を読めば、普段何気なく眺めている雑草が好きになること間違いなしです!
「雑草魂」という言葉もあるけど、これからの「予測不能な世界」を生き抜くヒントがたくさん出てくるよ
この記事を書いているGeroge(父)は、都内在住のサラリーマン。通勤電車のほぼ全てを読書に費やし、年間100冊程度の本を読んでいます(プロフィール)。また、家庭菜園も10年くらい楽しんでいます。
- 雑草の生命力やしたたかさに興味がある方
- 雑草に対してネガティブなイメージを持っている方
- 植物が大好きな方
\ それでは、いってみましょう
雑草の定義
そもそも「雑草」とはどんな植物のことを指し示すのでしょうか。その定義を調べてみました。
1.自然に生える、いろいろな草。また、名も知らない雑多な草。
2.農耕地や庭などで、栽培目的の植物以外の草。
出典 デジタル大辞泉(小学館)
他にも、農学の立場からみて、「作物に直接または間接的な害をもたらし、その生産を減少させる植物(荒井:1951)、だったり、
「人類の活動と幸福・繁栄に対して,これに逆らったりこれを妨害したりするすべての植物」(アメリカ雑草学会)などがありました。
やはり、一般的にも雑草に対する良い印象はないみたいですねぇ
雑草のしたたかさ
植物の強さの要素は主に以下の3つがあるといわれています。
- 競争に勝つ強さ(=他の植物との競争に勝ち残り生存する強さ)
- 耐える強さ(=砂漠のような環境で、じっと乾燥に耐える強さ)
- 変化を乗り越える強さ(=いつ何が起こるかわからない環境変化に適応し、乗り越える強さ)
雑草は、3番目の「変化を乗り越える強さ」が特に優れているそうです。
雑草は「人が望まない場所」に生える植物であるとの定義からすると、耕されたり、刈られたり、踏まれたり、といつ何が起こるかわからない過酷な環境にいつも身をおいていることになります。
過酷な環境においてしたたかに生き残る能力に優れているのが雑草。
ただ、雑草も万能ではありません。よくよく観察してみると、雑草もそれぞれ異なる強みを持っていて、実は自身の強みを発揮できる場所で生えているのだと著者は述べています。
ここで出ました、人生の教訓。「自分が輝ける場所(強みが発揮できる場所)がどこかを考えてみよう!」
雑草のふしぎと、そこから得られる世の中を生き抜くための教訓
ここからは、特に印象に残った雑草のふしぎ(強さ)がわかるエピソードをいくつか紹介します。
実は雑草は踏まれても立ち上がらない
なんど失敗しても、挫けても、あきらめずに立ち上がるたくましい精神を「雑草魂」と言うと思いますが、実は雑草は踏まれたら立ち上がることはしないそうです。
それはなぜか。
雑草にとって1番大事なことは、「花を咲かせて種を残すこと」。
この観点からすると踏まれても踏まれても立ち上がるということはとても無駄な努力。
立ち上がることにエネルギーを使うくらいなら、踏まれたうえで、どうやって花を咲かすかにエネルギーを使ったほうが合理的となります。
このため、踏まれた雑草は立ち上がるということをしないのです。
踏まれた状態のまま花を咲かせ、種をばら撒くことに専念しているのです。
どんな状況におかれても、本当に大切なことを意識して行動することが大事。雑草のようにしたたかになりたいですね……
ちなみに、オオバコという雑草は、人間に踏まれることによって種が拡散するようにできているそうです。
雑草に取って降りかかる困難な環境を逆に利用するという……
ピンチをチャンスに!
簡単には芽を出さな休眠戦略が得意なナズナ
イギリスのとある研究では、1平方メートル中に7万5千もの雑草の種が含まれていたそうです。
これだけの量の種があれば、1年中ひっきりなしに発芽しても良さそうですが、ここでも雑草は強さを発揮しています。
それは「休眠戦略」。発芽できる環境が整っていたとしても簡単には芽を出さないのです。
適温かつ日の光を浴びたとしても、秋に芽を出せば冬の寒さで枯れてしまうし、密集地で芽を出してしまえば日が当たらずに枯れてしまう。
このため、全滅リスクを回避するための生存本能として、発芽するベストなタイミングを見計らっているのです。
「雑草は人間が育てようとして育てられる代物ではない」と言われています。
ぺんぺん草の別名で知られるナズナは、一斉に発芽して刈られて全滅することを避けるため、時期をずらして発芽するという工夫を凝らしているのだそう……
ナズナは、あえて均一に「そろわない」という生存戦略。組織の生存に「多様性」が必要ということに通じる気がします。組織に取って如何に多様性が重要であるかを解説した「多様性の科学」の書評も書いたので読んでみてね
成長点が低いイネ科の雑草たち
ゴルフ場に植えられている芝はイネ科の植物なのですが、ゴルフ場は頻繁に芝刈りがあるため、少しでも周りの芝より高いと刈られてしまう危険があります。
このため、ゴルフ場の芝とそこに生えるスズメノカタビラという雑草の成長点はとても低くなっています。
成長点が低いため、いくら刈られてもまた成長することが可能になるのです。
さらにびっくりなのが、スズメノカタビラは、ティーグランド、グリーン、ラフとで微妙に刈られない高さで穂をつけるということ。
これは本当に驚きました……
少しでも周りの植物より上に出ると刈られてしまうことを本能的に理解している戦略です。
「出る杭は打たれる」ならぬ、「出る雑草は刈られる」ですね……
スズメノカタビラはとても賢い植物ですね。雑草と呼ぶのも申し訳ない
まとめ
いかがでしたでしょうか。私は本書を読んで、雑草に対するイメージが180度変わりました。
これまではネガティブなイメージしかなかった雑草ですが、1つ1つの雑草にはしたたかな生存戦略があって、ストーリーがあって、なんだか尊敬の念まで湧いてきました。
本書では1つ1つの雑草エピソードに人生への気づきを添えてくれていますので、大人だけではなく小さい子供さんにもうってつけの本だと思います。
稲垣栄洋さんの本はどれもとても読みやすく、植物への愛に溢れていて、かつ面白いので大好きなのですが、
特に本書については、植物好きなあなたに自信を持っておすすめしたい一冊です。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました〜。
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稲垣栄洋さんのこちらの本もおすすめ。イネ、コメが日本人の魂であることがとてもよく理解できます。
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