一括りにヨーロッパという言葉を聞くと、あなたはどのような印象を持ちますか?
ちなみに、私の場合は……
「歴史や文化の宝庫」、「美しい自然と風景」、そして「多様性」というキーワードが頭に浮かびます。
第二次世界大戦後、EUという共同体を築きあげてきた歴史的背景をもつヨーロッパですが、1つ1つの国は言語も人種も文化も異なります。
ヨーロッパとはどのような地域なの?と言われると意外と難しいというのが実際のところではないでしょうか。
本書、「食で読み解くヨーロッパ」は、意外と捉えどころのないヨーロッパを「食」をキーワードに読み解いていきます。朝倉書店さんは、いつも斬新で希少性の高い本を出版されるので好きです。
美味しそうな料理やヨーロッパ各所の街並みや風景の写真が盛りだくさん。ヨーロッパを旅している気分を味わえるのも魅力です
ボスポラス海峡を挟んでアジアとヨーロッパにまたがるトルコには遊びに行ったことがあるのですが、本場のヨーロッパは行ったことないんですよね〜。いつか行ってみたいと思っています
この記事を書いているGeroge(父)は、都内在住のサラリーマン。通勤電車のほぼ全てを読書に費やし、年間100冊程度の本を読んでいます。また、家庭菜園も大好きです(プロフィール)。
- ヨーロッパの多様性に富んだ「食」や歴史に興味がある方
- ヨーロッパ旅行を計画している方(写真満載。行きたい場所が見つかるかも)
\ それでは、いってみましょう
多様性に富んだ食文化を持つヨーロッパ
基本的に陸続きであり、E Uによる地域統合の影響で共同体のイメージが強いヨーロッパですが、実際には大小様々な40以上の主権国家により構成されています。
移民の流入が多いのも特徴となっていて、EU加盟国の外国人比率は7.5%(2017年時点 出所:本書)にも及んでいます。
日本より国土面積が大きい国は、フランスとスペイン、スウェーデンだけ。人口はドイツの8000万人強が最大となっています。
また、自然環境に目を向けると、アルプス山脈の北と南で夏の期間や冬の気温が大きく異なることもヨーロッパの特徴。
ヨーロッパの「食」の多様性は、民族や人種の多さに加え、東西南北で異なる自然環境(気候)によるものなのです。
ヨーロッパの食はムギと油脂が中心
ヨーロッパの食といえば、まずパンやパスタが思い浮かぶと思いますが、ほぼ全域でムギが食べられています。
もう1つ、ヨーロッパの食の共通項を取り上げるとすれば、それは油脂。地中海地方は温暖な気候を活かし、乾燥に強いオリーブが育てられています。
一方、あまり日照量を確保できない東ヨーロッパは、豚が飼育され食されてきたのが特徴。
なぜ豚なのかといえば、北西ヨーロッパから東ヨーロッパにかけて広がる落葉広葉樹の森に豚を放てば、容易に育ったため。
ムギはコメ、トウモロコシと並んで世界三大穀物と呼ばれるものの、収穫量に劣り、連絡障害が発生しやすい等の問題がありました。ムギだけでは不足するエネルギーとタンパク質を豚で摂取していたんですね
アイルランドの悲劇 ジャガイモをめぐる物語
ジャガイモの原産は南アメリカのアンデス山脈であり、16世紀にヨーロッパに伝わりました。
現在では、ジャガイモ料理といえばドイツが有名ですが、その背景は18世紀のプロイセン(今のドイツ)でフリードリヒ大王がジャガイモの作付を国民に奨励するジャガイモ令を発しことがきっかけ。
ジャガイモ令はなんだかおもしろきもする気でお、日本も米づくりを奨励する三世一身の法とか墾田永年私財法とかあったよね
東ヨーロッパは地力が弱いため、痩せた土地でも育つジャガイモはうってつけだったのです。
ジャガイモは豚の餌にもなったため養豚が盛んに。ドイツにおけるソーセージの起源ともなっていきます。
プロイセンの人口は増加し、国土も大きく拡張しました。
以降、ジャガイモはヨーロッパ全土の砂地や痩せた土地で栽培が盛んになるのですが、
ジャガイモに過度に依存した体質が「アイルランドの悲劇」を生み出したことは有名です。
アイルランドの悲劇とは、豊かな土地をイギリスに奪われ、痩せた土地でジャガイモに依存した生活を営んでいたアイルランドで、ジャガイモの病気で収量が激減。飢饉により250万人ものアイルラン人が餓死した悲劇です。
あまりの食料難に直面したことから、種イモまで食してしまったことで、数年にわたって飢饉が継続
実態としては、アイルラン人がイギリスに収めた小麦が十分にあったものの、イギリスに見捨てられたことが、この悲劇の直接的な原因とされています。
ミネラルウォーターの起源
日本でもミネラルウォーターがコンビニに並んで久しく、今では当たり前の光景になっていますよね。ただ、ヨーロッパでは水道水は飲まず、有料のミネラルウォーターを飲んでいます。これは一体なぜなんだろうか
18世紀後半以降、都市の近代化が進むにつれ、地方の農村から多くの労働者が流入。都市人口は増加の一致を辿っていた。
一方、都市の生活施設は旧態依然としたものであり、特に上下水道などは整備されていなかったことから、人口過密の状況の中、極めて不衛生な状態。
生活排水は川に流され、地下水が汚染され、井戸からは悪臭が…….げげ
そんな井戸から飲料水を摂取していた中、19世紀前半にはコレラが大流行し、多くの市民が命を落とすことに……
このような状況で富裕層がこぞって上質でキレイな水を買い求めたのが、ミネラルウォーターの起源。その後だブームとなり、世界中に広まっていきました。
海外で水はスーパーで買うものとなっている理由に合点がいきました。
スイスのレマン湖近隣のエビアンは1826年発祥……なるほどです
砂糖はどのように広まったのか
砂糖が世界に広まったのもヨーロッパが起源。
砂糖の材料となるサトウキビの原産もヨーロッパではなくニューギニア。
ここでも砂糖をめぐる黒歴史が……
17-18世紀にイギリスをはじめとする西ヨーロッパの富裕層の間で喫茶ブームが発生したことにより、砂糖の需要が急増しました。
これを受けイギリスは、西インド諸島でサトウキビの大型プランテーションを営むことにしましたが、慢性的な労働力不足に直面。
この労働力不足に対応するため、西アフリカの住民(今のガーナやコートジボワール)を奴隷として船に詰みこみ、西インド諸島でサトウキビ栽培に従事させ製造した砂糖を大量にイギリスに持ち帰り莫大な利益を得るようになった。
これが、悪名高い三角貿易(通称:奴隷貿易)と言われるもの。
人の欲望は止まるところを知らない。昔歴史の授業で習いました。
黒い積荷(奴隷)を下ろし、白い積荷(砂糖)を積み込む
大英帝国の繁栄はこの砂糖による莫大な利益と密接に結びついていたのです。
その後、ヨーロッパ原産のテンサイの根っこから製糖できることが発見されたことで、砂糖が庶民の手に入るほどに普及していきました。
まとめ
著者の加賀美さんは「食」には、文化的側面と社会的側面があると言います。
自然環境が異なれば食べるものは変わりますし、「食」には味があるため、人の欲求の対象となり争いや貧富の差を生むなど、社会的な側面を多く含むという指摘には納得感があります。
ここで紹介した内容は個人的に知的好奇心をくすぐられたものが中心ですが、本書の特徴の1つはなんといっても美味しそうな料理の写真や、ヨーロッパ各地の綺麗な風景写真です。
ヨーロッパを「食」という視点で読み解きながら、ヨーロッパを擬似旅行しているような気分にさせてくれます。
あまり知られていないニッチな本かと思いますが、ヨーロッパに興味を持っている人は一読の価値がある良書とおもます。
最後まで読んでくれて、ありがとうございました〜。
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