【書評No.40】老いるのが怖い人必読! 「生き物が老いるということ」 稲垣栄養

「老い」……幸運なことに、ここまで大病なく健康に過ごしてこれていますが、40代になって体力の衰えは感じるようになりました。

昔のように睡眠時間削って長時間働くことは難しいです。すぐ疲れます。

子供がどんどん成長していって嬉しい一方で、親はどんどん体力が減っていく……適切な表現が思い浮かばないですが、なんとなく「寂しい」感じもします。

そんな中読んだ本が稲垣栄洋さんの「生き物が老いるということ」

この本を読むと、なにかと否定的に捉えがちな「老い」というものに対してポシティブな見方ができるようになると思います。

人間をはじめ、生き物にとって「老いる」とはどのような意味があるのでしょうか。

稲垣栄洋さんの本は中学受験の国語の問題によく採用されることで有名みたいですね。とても平易に書かれているので、小学校高学年くらいの子供さんでも興味深く読めるのではないかと思います。

この本(記事)はこんな人におすすめ
  • 気力・体力の衰えを感じて、少し寂しく感じている方(ポジティブになれます)
  • 「老い」とは一体何者なのか。に興味がある方(知的好奇心を満たせます)
  • 生き物の進化論に興味関心がある方

\ それでは、いってみましょう

目次

老いとは「実る」こと

本書の命題ですが、「老い」とは一体何なのでしょうか。

植物学に詳しい稲垣さんらしく、まずはイネを題材に「老い」を考察されています。

イネにとって「老いる」ことは「実る」こと。

葉を茂らせて光合成をし、一生懸命茎を伸ばして、稲穂に花を咲かせたのも、すべては米を実らせるため。

イネに限ったことではないですが、植物には肥料をあげすぎることによるツルボケという症状があります。

肥料過多になると、茎が伸びたり葉が勢いよく繁るので、収穫に向けた期待は高まるのですが、肝心の実が大きくならず、収量が落ちてしまうのです。

George(父)

肥料や水分が過多になると、植物は葉を繁らせることばかりに夢中になってしまい、「実る」ことが忘れられてしまうことは、家庭菜園の世界でもよく起こります。
トマトは水をあげすぎると甘くならなかったり…….
肥培管理がとても重要になってくるんです

イネは、葉が枯れるにつれて稲穂が実ってくる。

何かを失う代わりに、一番大事な米を実らせる。植物にとっての「老い」は新たな「成長のステージ」であるといえるのではないでしょうか。

では、他の生き物ははどうでしょうか。

冷静に考えれば、生き物は生まれた瞬間から死に向かって少しずつ老いていきます。

オタマジャクシが尻尾を失って手や足を獲得するように、芋虫が蛹を経て体は小さくなっても羽を獲得するように、何かを失って別の何かを得るというというのが「成長であり、老いでもあります」。

人間にとっての「老い」もこれに通じるところがあるのではないか、という稲垣さんの投げかけから本書は始まります。

人間は老いることができる特別な存在

それでは、全ての生き物が「老いる」ことができるのかというとそんなことはありません。

けー(中1長男)

え!? 老いて死ぬのが当たり前だと思ってたけど……

セミは成虫になると昨日まで元気に泣いていたのに7日間で死んでしまいます。

鮭は、あんなに力強く川を遡上してきたのに、産卵を終えると死んでしまいます。

老いることなく生命を終えているのです。

でも、人は「老います」。生き物にとって、「老いる」ことは当たり前のことではないことがわかりますね。

ペットは「老いる」ではないかという意見もあると思いますが、自然界では「老いて」体力が落ちれば天敵に捕食されてしまうので、「老い」を経験することは稀です。ペットは、あくまで人間が作り出した環境においてのみ「老いる」ことができるのです。

老いる」ことができる人間は、特別な存在なのです。

George(父)

なるほど……「老いる」ことに対する印象が少し変わってきました

けー(中1長男)

「老いる」ことは特別なことだということはわかったけど、そもそもどうして、老いて「死ぬこと」に意味はあるのかな

死なないジャガイモ

なぜ、人は老いて、やがて死ぬのでしょうか。死ぬことがないジャガイモの話が面白いです。

ジャガイモは、種イモを植えると芽が出て花が咲いて、やがて枯れますが、土の中では新たなジャガイモがたくさん実ります。

実は、この土の中にできたジャガイモは自分の子孫ではなく、自らの体の一部、コピーなんです。

これがジャガイモは死なない植物と著者が呼ぶ理由なのですが、このように植物には「死なずに生き続ける」という選択肢もあるのです。

にもかかわらず、多くの植物が、花が咲いた後に枯れ(死)、種(子孫)を残す方法を選択するのはなぜなのでしょうか。

人間もジャガイモと同じように、死なずに生き続ける選択肢を取ることはできないのか。

この疑問に答えるため、19世紀に発生した「アイルランドの悲劇」が紹介されています。

アイルランドの悲劇とは、1845年に発生したジャガイモの疫病による大飢饉のことであり、100万人以上のアイルランド人が亡くなりました。

当時のアイルランドは単一品種のジャガイモを主食として栽培していましたが、単一品種がゆえ疫病により全滅してしまったのです。

芋で自らの分身、コピーを増やしていくジャガイモはその均一性がゆえ、何か事が起これば全滅してしまうリスクがあるのです。

だからこそ、植物の多くが種子で子孫を残す選択をしています。

種子で増えた子孫は、それぞれ異なった特徴を備えているため、疫病が発生してもどれかが生き残ることができる。

目まぐるしい外部環境の変化を踏まえると、自分だけが生き残り続けるよりも多様性に富んだ子孫を残していく方が、種の保存としては理にかなっているということなのです。

人間が「死」を獲得した理由も基本的には一緒です。

男と女が遺伝子を交換しながら子孫に受け継いていくことこそが、人間の進化と環境変化に強い多様性を獲得するための秘訣であると言えそうです。

George(父)

生物や組織にとって多様性がいかに重要な意味を持つか……
については、「多様性の科学」という本が詳しいです。記事にしているので良ければこちらもどうぞ〜

老いが人類を発展させた

先ほど、人間は「老いること」ができる特別な存在であると書きましたが、この「老い」が人類を発展させたと稲垣さんは述べています。

昆虫は「老いる」ことがない代わりに、生まれながらにして「本能」を備えています。

本能というのは、誰かに教わったり学習や練習をする事なくできる能力のことで、カマキリの赤ちゃんが小さな虫を捕食することであったり、ミツバチが六角形の巣を作れるなどが本能です。

一方、哺乳類の場合、多少の本能は備えているものの、教わらなければ基本的には何もできません

ライオンや狼も狩りのやり方を親から教わらなければ何もできないし、人間の子供に至っては、自立して生きていくためには、より多くの時間を費やして学習する必要があります。

George(父)

人の赤ちゃんほど無力で無防備な存在はありません

このように昆虫が本能を備えた一方、人間をはじめとした哺乳類は「知能」を発達・進化させてきました。

「本能」は、同一環境の単調な作業では大きな力を発揮しますが、環境変化に極めて弱いという特性を持ちます。

「知能」はどんな環境変化があったとしても、自ら考え臨機応変に対応していくことができるというメリットがある一方、その獲得には多くの時間と学習が必要とないう特徴を持ちます。

けー(中1長男)

知能を正しく使いこなすには、膨大な「情報」とその情報をもとに成功と失敗を繰り返す「経験」が必要です。大変なんです

しかし、経験することは基本命懸けです。自然界においては、一度の失敗が「死」に直結します。

シマウマの赤ちゃんがライオンに遭遇した時に「逃げる」事ができなければ知能が育つ前に「死」を迎えることになるからです。

したがって、人間をはじめとする哺乳類は「知能」は育てる仕組みが必要となります。

この仕組みが親による「子育て」です。

子育ての必要性が、人間の「寿命を伸ばす」ことに繋がったため、「老い」と密接な関係があることになります。

(参考)おばあちゃん仮説

人類が進化・発展してきた要因は様々あると思いますが、

その1つに、おばあちゃんが子育てに参画し、「知能」を授けることが人類の進化に繋がったとする「おばあちゃん仮説」と言われている面白いものがあります。

George(父)

おばあちゃんがいるシャチの群れでは、いない群れよりも孫の生存率が高まるという結果もあるみたい

人類とシャチは、生殖期を過ぎたメスがその後も長寿をまっとうするという共通点があるとのことですが、その理由としての「おばあちゃん仮説」は大変興味深いです。

人が老いることの意味とは(まとめ)

最後に、本書の命題である「老いる」ことの意味を要約するとおよそ以下のような感じかと思います。

  • 人類は次の世代のために長生きするという特徴、すなわち「老いる」ことを手に入れた。
  • 進化論的にも年寄りが次の世代のために存在しているのは疑う余地がない

ただし、特に最近の人類は、様々な科学技術の恩恵も受けながら、生殖も子育ても終えた後にも時間が残されているケースが存在します。

これが「老後」ということだと思いますが、ヒトの遺伝子ミッションから解き放たれた本当の「自由」な時間だとは言えないでしょうか。

稲垣さんは最後に、人間にだけに与えられた「老後」という貴重な時間を忌み嫌うのではなく、次世代のためにしっかりと「老いる(=生き方の次世代に示す)」ことが大事なのではないかと提案しています。

いかがでしたでしょうか。

皆さんが「老いる」ことをどのように捉えるか、ぜひ本書を手に取って考えてみていただくことをお勧めします。

George(父)

アフリカでは老人が1人死ぬことは図書館が1つなくなるようなものである、という表現があるみたいです。

本書を読んで、「老いる」ことを前向きに捉えられるようになった気がします。素敵な老人になろうと決意しました

けー(中1長男)

最後まで読んでくれて、ありがとうございました〜。
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この記事を書いた人

40代都内サラリーマン🧑‍💼 妻1人、子供3人の父
新しいもの好きで飽きっぽい性格。人生とことん楽しむために、仕事も頑張る
座右の銘は「知らぬが仏、忘れるが勝ち」
↓このあたりをテーマに不定期に配信します
読書、家庭菜園、家族、Python、機械学習、筋トレ

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