【書評No.39】ビジネスを成功に導く! 確率思考の戦略論(森岡毅、今西聖貴)

USJ復活の立役者、日本を代表する数学マーケターである森岡毅さん。

森岡さんとはP&G時代からの盟友で、市場構造の解析および需要予測モデル開発運用の第一人者である、今西聖貴人さん。

そんな2人の共著である「確率思考の戦略論」は、ビジネスの成否を「確率」の世界に落とし込み、数学的な視点からアプローチする方法を解説しており、ベストセラーとなりました。

実は数年前に一度読んだことがあるのですが、難しい数式と統計用語を見て挫折した経緯があります……

今回、数年振りに読んでみたところ、意外にも前回より理解できて嬉しくなり、ブログ書くぞとなったわけです。

この記事を書いているGeroge(父)は、都内在住のサラリーマン。通勤電車のほぼ全てを読書に費やし、年間100冊程度の本を読んでいます(プロフィール)。

この記事(本)はこんな人におすすめ
  • 数学を駆使したマーケティングの凄さを実感したい方
  • 市場調査等の実態を知りたい方(P&Gなど消費財系の事例が豊富です)
  • 森岡毅さんのファン
George(父)

数学の記述は最小限に抑えられているので、数学が苦手な方(自分も)でも心配ありません。最後まで読み切れば、本書が言わんとしていることは理解できるはず

\ それでは、いってみましょう

目次

勝てる確率が高い戦いを探すのがビジネスの定石

USJ復活の要因はハリーポッターに依るものだと思っている人は多いと思いますが、実はこれだけではありません。

「ハロウィーンのゾンビイベント」、「ファミリー向けのユニバーサルワンダーランド」、「スパイダーマン」、「モンスターハンター」、「ワンピース」など、全てが計画を上回る集客を実現するなど、森岡さんが企画したイベントのの成功確率は100%という信じられないパフォーマンスを発揮しています。

テーマパークというやや特殊な印象を受ける業界で、どうしてこのような離れ業が実践できたのでしょうか。

森岡さんは、ビジネスの成否は「確率」の問題で、それをある程度はコントロールすることができると断言します。

市場構造の「本質」を理解し、成功確率の高い企業戦略を選択することが何よりも重要であると述べています。

市場構造とは何か。

市場構造とは、ある商品カテゴリーにおける人々の意思と利害と行動が積み上がった全体としての業界の仕組み」のこと。

成功確率の高い企業戦略を選択するためには、この市場構造の本質を理解することが必要で、市場構造を精緻に分析し、勝てる戦いを見つけること。勝てない戦いはしない。これで成功確率を上げていく

けー(中1長男)

市場構造を理解することが大事なのはわかったけど、具体的には何をどうしたらいいのかな?

市場構造の「本質」とはなんでしょうか。

市場構造の本質は消費者のプレファレンスにあり

ズバリ、市場構造を形作っている本質は「消費者のプレファレンス」。これが本書の要諦。

プレファレンスとは、「消費者のブランドに対する相対的な好意度(好み)」のこと。

なぜ、消費者のプレファレンスが市場構造の本質であるかといえば、製造業も、中間流通業も、小売業も、最終的には、最終消費者(購買者)に従う必要があるためです。

市場は異なっても、全ては消費者の購買行動が全てを決定づける要素ということです。

けー(中1長男)

プレファレンスが大事なのはわかったけど、ビジネスを成功させる上で、ほかに大事なことことはないの?

ビジネスを拡大するためには?

ここでいうビジネスの拡大は、売上の拡大と同義とします。

売上高は、自社ブランドに対する「消費者のプレファレンス(好感度)」によって最大のポテンシャルが決まり、実際の結果は、この最大ポテンシャルに「認知」「配荷」により制限が加えられる形となります。

売上高 = ❶消費者のプレファレンス(好感度) ×  ❷認知率(%) ×  ❸配荷率(%)

消費者がモノを購入する仕組みをベン図にしてみたもの

市場規模を一定とすると、売上を伸ばすためには、❶プレファレンスを上げる、❷認知率を上げる、❸配荷率を上げる、の3つしか方法がありません。

George(父)

どんなに良い商品・サービスも消費者が知らなければ購入することはないし、お店にしっかりと商品が並ぶなど、物理的に買える状況になければ購入できないということですね

認知率に伸び代はあるか?

競合する商品・サービスと比べて認知率が劣後している場合は、認知率を上げることによりシェアを取れる可能性があります。

認知率を上げることにより、ビジネスは一定程度まで右肩上がりの直線で伸びていきます。

ただし、10%の認知率を20%に上げるコストと、70%を80%に上げるコストは大きく異なるため、他の戦略と比較・検討するべきであると本書で解説されています。

George(父)

商品やサービスを知ってもらうことはとても大事だけど、プロモーションには様々な費用がかかります

けー(中1長男)

購入できる消費者層が限定される高級品・嗜好品(例えば高級腕時計など)を扱う場合は、認知率向上が消費者の特別感を毀損してしまうなんてこともあるので留意が必要です

配荷率に伸び代はあるか?

配荷率とは、市場に存在する何%の消費者がその商品を買おうと思えば物理的に買える状態にあるかを表す指標です。

この定義だけ見ると、シンプルにたくさんの店舗に自社製品を置くことに主眼が置かれますが、競合他社も同じことを考えるため、消耗線になりがちです。

配荷率を上げるためには、商品を置く店舗の気持ちになって考えることが大事。

自社のサービスや製品が、その小売店舗等にとって、どのような役割が発揮できるのか。

その小売店に来店する顧客のプレファレンスに適合した商品を並べる提案ができるのであれば、配荷率を伸ばしていくことが可能となります。

けー(中1長男)

配荷率を伸ばすというのは、要するに販路を拡大するということだと捉えるとわかりやすいかも

George(父)

サントリーによるアメリカ・ビーム社(ジムビーム)の買収は、ブランドの獲得に加え、アメリカ全土の販売チャネルを確保することが目的との見立てがあります。配荷率は重要な要素ですね

売上を伸ばす上で重要な認知率と配荷率ですが、いずれも限界があります

日本人の男性を対象とした製品であれば、どんなに認知率を上げても、最大で6,000万人です。

店舗の数や他社との競合を考えると配荷率にも限界があるでしょう。

一方、プレファレンスのみが無限の可能性を秘めているため、企業の戦略としては、このプレファレンスをいかに高めていけるかが最重要である、ということになるわけです。

プレファレンスを伸ばすには?

ここで、自社の商品が選ばれる確率を表したモデル(負の二項分布 NBDモデル)が紹介されています。

引用:確率思考の戦略論 NBDモデル(負の二項分布)

上の数式では、MとKが登場しますが、基本的にコントロールできるのはMの方。

「KはMの結果決まるものなので、直接コントロールすることはできない」とだけ認識しておけば良いとのこと。

George(父)

お言葉に甘えてそのようにさせていただきました(笑)
Kは確率分布の形なので、商品カテゴリー等によって自然に決まるということみたいでした

Mは、自社ブランドを全ての消費者が選択した延べ回数を、消費者の頭数で割ったもので、自社ブランドが一定期間に選ばれる確率そのもの(=プレファレンス)、ということです。

正直なところ、この数式を解説することは私には不可能なので、本書で述べられている結論だけ紹介します。

プレファレンス(M)を拡大する方法は大きく、「垂直方向に伸ばす」「水平方向に伸ばす」の2つあります。

ターゲットを狭めて、コアな消費者の1人あたり購入金額を伸ばすのが「垂直方向の拡大」

ターゲットを大きく捉え、消費者自体の絶対数を拡大していくのが「水平方向の拡大」

森岡さん的には、「水平方向への拡大」を推していますUSJが「映画だけの専門パーク」から、アニメやゲームを加えた「エンターテインメントのセレクトショップ」へと脱皮し、成功した体験からの意見かと思います。

差別化を重視するあまり、無用に消費者プレファレンスの絶対量を制限することになっていないか、という視点を持つことが重要だということです。

また、水平方向にプレファレンスの拡大を図るとしても、既存顧客のプレファレンスを毀損しないようにすることが大前提となります。

George(父)

ビジネスの拡大には、プレファレンスの拡大が最重要であることがわかりました。具体的にどのようにプレファレンスを拡大していくかは、ケースバイケースです…経験が必要そうです(泣)

けー(中1長男)

失敗を恐れず、何事も経験あるのみ!

プレファレンスをどのように拡大させるのかのヒントとして、製品パフォーマンス(機能・効能)についての言及がありました。

洗剤など、売上の大半を再購入から得るリピートビジネスにおいては、製品パフォーマンスがプレファレンスを決定づける大きな要因となります。

一方、観光地のお土産屋など、一度きりのトライアルビジネスでは、製品パフォーマンスは不要なケースもあります。
この場合はブランドエクイティ(消費者から見た自社の強み・特徴のイメージ)が重要となったりします。

まとめ

本書の主旨をまとめると、

ビジネス拡大の成否は、「消費者プレファレンス」によって決まるため、経営資源はここに集中的に投入するべきである、ということです。

本書の後半では、プレファレンスを知るための市場調査の具体的な方法や、

消費者データに潜む危険性(聞き方や環境によって信頼のおけないデータに変質)などなど、興味深いテーマが目白押しでした。

USJをV字回復に導いた秘話や、森岡さん、今西さんのP&G時代のお話もとても面白かったです。

これからのビジネスマンの必須スキルと言われるマーケティングの本質を理解する上でも、本書を1度読まれることをおすすめします。

マーケティングの魅力に取り憑かれちゃうかも知れませんよ。

けー(中1長男)

最後まで読んでくれて、ありがとうございました〜。
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この記事を書いた人

40代都内サラリーマン🧑‍💼 妻1人、子供3人の父
新しいもの好きで飽きっぽい性格。人生とことん楽しむために、仕事も頑張る
座右の銘は「知らぬが仏、忘れるが勝ち」
↓このあたりをテーマに不定期に配信します
読書、家庭菜園、家族、Python、機械学習、筋トレ

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