さて、今回は久しぶりに読んだデータ分析の本がとってもしっくりきたので紹介します。
本のタイトルは、「データ分析・AIを実務に活かす データドリブン思考」。
こちらの本の著者は、滋賀大学・データサイエンス学部、河本薫教授です。
河本教授はもともと大阪ガスのご出身。
同社のビジネスアナリシスセンターの初代センター長を務められ、
現在もデータ分析界隈の草分け的な存在として活躍されています。
- データ分析が大事なのはわかるけど、どうにも上手く活用できていないとお悩みの方
- データ分析を頼まれたけど、何から手をつけて良いかわからなくて困っている方
- 勘と経験に基づいた意思決定プロセスを改善したい会社経営者

データ分析ってビジネスを成功に導くための手段のはずなのに、いつ間にか目的になっちゃうんですよね。
なんてモヤモヤを抱えている人が読むと本当に参考になると思いますよ


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\ それでは、いってみましょう
なぜデータ活用が進まないのか?意思決定プロセスの形式知化の重要性
データ活用の目的
「データ活用が重要なのはわかるけど、なぜか前に進まない……」
多くの日本企業が抱えている悩みかと思います。



毎日悩んでいます
分析スキルがないから?
分析結果を読み解く力がないから?
いえいえ、違います。
結論から言うと、



じゃあ、データ分析が意思決定に活用されない要因は何なんだろう……



当然の疑問ですよね
そもそも、データ分析って何のために行うのでしょうか。
著者の河本教授が長年悩み抜いてたどり着いた答え(=理由)というのが、こちら。
これを意識して、もう一度、「データ活用がなぜ前に進まないのか?」の真因を探ってみると……
「データ分析が貢献するべき、“意思決定プロセス”が勘と経験に頼った暗黙知の中で行われているから」、
といえます。
つまり、意思決定プロセスを理解しない中で分析だけしても、効果は無いということなのです。
以下もとても参考になったくだり。
「データ分析で何を解けばいいですか?」と依頼者に問うのは誤りで、「データ分析を活かして、どのような意思決定プロセスを作りたいのですか?」と問うのが正しい
引用:「データドリブン思考」



意思決定プロセスに活用されないデータ分析は、どんなに労力をかけたとしても無価値なのだ



では、どうすれば良いのかな
意思決定プロセスの形式知化
ケンブリッジ大学Barbara Sahakian教授の研究によると、人は1日に最大3万5,000回の決断をしているという……。



そんなに!?
ほとんど無意識だ
個人と同様、企業も一緒で、1日に数えきれないほどの意思決定を行なっていますが、
勘や経験に基づいた暗黙知の中で行なっていることが多いと思います。
したがって、データ分析の力で「判断と意思決定の成功確率を上げたい」と考えた時にまずやるべきことは、
「意思決定プロセスを形式知化すること」です。



本書で1番大事なポイントだよ
意思決定プロセスとデータ分析の位置関係
「意思決定プロセスを形式知化する」と言っても、何をすれば良いのかわからないですよね。
まずは、意思決定プロセスとデータ分析の位置関係を正しく理解することからはじめましょう。
2つの関係を図示すると以下のようになります。


「選択肢を投入して、手掛かりを付与して、それらを元に選択・決定する」、
という一連の流れが意思決定プロセスであり、これをサポートするのがデータ分析、
という位置関係をしっかりと理解しましょう。
意思決定プロセスの形式知化とは、上の図にもあるように、データ分析を活用して
- (意思決定のための)選択肢を用意したいのか
- (意思決定のための)手掛かりを付与したいのか
- (意思決定のための)最終的な選択・決定をサポートしたいのか
を見極めることが、ここでいう「意思決定プロセスを形式知化すること」にあたります。



データ分析を意思決定プロセスのどの部分に活用するかは、
問題や取り組むべき課題の種類によって異なるので、
まずは問題や課題を見極めるところが最初のスタートになります
意思決定プロセスにも色々ある
本書では、データ分析がサポートするべき意思決定プロセスを6種類に分類した上で、
それぞれに合ったデータ分析のアプローチについて解説しています。
6つの意思決定プロセスとは、①反復型、②体制選択型、③原因特定型、
④計画策定型、⑤仮設思考型、⑥経営判断型。
それぞれの詳細については、具体的な事例を元に解説している本書を読んでいただきたいと思いますが、
個人的にも特に印象に残ったのが「経営判断型」。
経営判断型の例としては、新規事業進出や事業撤退、政策立案などで、
経営に対する影響が非常に大きい一方で、データ分析が果たせる役割が少ないのがこのパターン。
その理由としては、不確実性が高い中で、結果が出るまで時間がかかることだったり、
反復型経営判断と異なり1回勝負であることなどが挙げられます。



いずれの意思決定プロセスであっても、それに見合ったデータ分析を意思決定者とコミュニケーションをとりながら取り組んでいくことが大切



意思決定プロセスを形式知へ変換することにも限界があるから、
AIもデータ分析も万能ではないということを忘れないようにしなきゃね
データ分析と人の暗黙知の掛け合わせが勝つ
本書の内容とは異なる個人の感想。
昨今の生成AIの急成長により、AI(データ分析)と人の優劣を比較する論調が至る所で目につきます。
しかし、「経営判断型」の意思決定プロセスではデータ分析が寄与できる割合が少ない、
との解説を受け感じたことは、複雑な問題や課題に対しては
AI(データ分析)と人(勘と経験)が協働することが最も効果が高い、ということです。
資産運用の世界でも同様の例があります。
AIが最適な運用を行う「AI・アナリスト」と「人間のアナリスト」の成績を比べると、
ロボ・アナリストが勝るのですが、「AI×人」と「ロボ」で比較すると「AI×人」が勝るとの研究結果があるんです。



これからどこまでAIが成長していくのかは想像できないけど、現時点では、「AIと人の協働」が最適解


まとめ
本書内容を要約すると……
- なぜ、データ活用が前に進まないのか。その理由は、企業の意思決定プロセスが勘と経験に頼ったものとなっており、データ分析が意思決定プロセスに寄与することができていないから
- データ分析が意思決定プロセスに寄与することに繋げるためには、データ分析という武器を使って何を解決しようとしているのかをしっかりと見極める、すなわち、意思決定プロセスの暗黙知部分を形式知化しなければならない
- 意思決定プロセスは6つに類型化でき、それぞれに適したデータ活用アプローチの方法がある。また、組織全体の最適化を実現するためのKPI設定の方法等についても解説している
- データドリブン思考の導入は、意思決定プロセスの改善だけでなく、企業文化の変革にもつながる重要な取り組み。障壁は様々あるが、取り組む価値がある
本書は、データ分析を会社経営に活用しようとした際の「現場あるある」とその解決策を具体的に解説しているなど、
とても現場に寄り添った内容となっています。
今まさに、データ分析の現場で戦っている方は読んでおいて損はない、
というか絶対読むべき1冊ではないかと思います。



最後まで読んでくれて、ありがとうございました〜。
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